「やっぱり私、ちゃんと、スマホ代弁償するよ」

もう逃げないよ。

遥琉が逃げてばかりならなおさら、私は逃げられない。

「えっ……」

私からそんなこと言われるとは思わなかったのか、遥琉はあからさまに一瞬驚いたような顔をしてこちらを見た。

「いや、海風、お金ないでしょ。だから別に……」

「一括では難しいかもしれないけど、ちゃんと返すよ。弁償して欲しいんだよね」

「……っ……まぁ」

「うん。ちゃんと返すから。だからもうこういうのおしまい」

「…………」

自分でもびっくりするほど穏やかに話せている。

最初からこうすればよかったなんて思うほど。

『遥琉に借金があるから』

そんなことを理由に、この変な関係を続けるのはもう限界だ。

これだときっと昔と同じだ。
何も進まない。

遥琉と話して、遊んで、笑って、遥琉の家族ともまたたくさん笑って。

そういうものを、そんな理由で繋ぎ止めたくないと思ったから。

自分のこの気持ちだってそう。

全部ちゃんと綺麗にして向き合わないと、また逆戻りな気がするから。