……ううん。
「私じゃだめなんだよ」
「だから何がだよ」
「……ずっと総真くんのこと見て来たからわかる。総真くん、すごい人だよ。これから総真くんの世界は、日本だけじゃなくなる。どういう進路を選ぶとかはわかんないけど、そういうとき……私が、ただの幼馴染でいられたら問題ない。でも、彼女、だったら……総真くんの邪魔になる」
私は総真くんのことが大好きで、本音を言うならずっと一緒にいたい。
一秒だって離れていたくないくらい。
けれど、実際そんなことは出来ないし、それは『私』という主体がいない。
ただ、総真くんにくっついて総真くんに甘える寄生虫だ。
……大好きだから、そんな存在になりたくない。
少し、沈黙が落ちた。
お兄ちゃんも那也お姉ちゃんも、言葉を探してくれているんだろうか――
「羽咲ちゃん……それはきっとね?」
沈黙を破ったのは那也お姉ちゃんだった。



