「これは――」
「那也! そいつに近づくな! そいつは今発情してるから!」
「由羽くん! 妹に言う言葉じゃないよ!」
「本当なんだよ那也! 俺は今変態に追いつめられている状態だからせめて那也は逃げてくれ……!」
……我が兄、演技じゃなくガチで言っている模様。
那也お姉ちゃんは困った顔になってしまった。
「……羽咲ちゃん、よくわからないけど、何かあったの? 話くらい聞くよ?」
出会いがしらではめちゃくちゃカッコいいところを見たけど、弟さんがいるらしくとても面倒見がいい那也お姉ちゃんだ。
私は頭の整理をするためにも、こくりと肯いた。
「……いやそれ、ただ総真が可哀想なだけじゃね?」
勉強机の椅子に胡坐をかいて、私の話を聞いたお兄ちゃんの第一声だった。
私と那也お姉ちゃんは、並んでお兄ちゃんのベッドに座っている。
「だよね……」
心配して探しに来た相手に手を振り払われるって……。
さっきは総真くんの言葉に舞い上がっていたけど、今頃そっちに頭がついてきた。
うつむく私に、そっと、那也お姉ちゃんが頭に手を置いた。
「びっくりしちゃった?」



