碓氷のおうちで総真くんが蒼くなっているなんて露知らず、自分の家に逃げ帰った私はそのまま自分の部屋に駆け込んだ。
勢いよく閉めたドアに背をつけて、今更ながらカーッと熱くなってきた顔を両手で覆う。
「~~~なにあれぇ……現実? 夢? き、きっと私に都合のいい勝手な夢だよ――」
『……うー……すきだよ………』
夢じゃない! 頭の中に何度も蘇る総真くんの声。
優しくて甘ったるくて……私が変態じゃなくても本気にしちゃうよ!
ううん、本気……なんだよね? 総真くん、言ってた。
総真くんが私に対して持っている想いは、私がほしいと思っているものだって。
でも、何かの理由があって口にすることは出来なくて……それを、眠っていたから無意識に寝言で言っちゃったってことだよね……?
あああああああああああ!!!!!
「うるさいバカ! 何やって――ってほんと何やってんだお前⁉」
興奮がおさまりきらず壁に頭を打ち付けていると、ドアが開いてお兄ちゃんが怒鳴りこんできた。
その驚きに目を見開くお兄ちゃんが、今は救いの神に見えた。
「お兄ちゃ~~~んっ!」
「怖い! 怖いから近寄るな!」
どうしてか私に本気で怯えた様子のお兄ちゃんを追うと、逃げられた。



