「え、ほんとなに? どうしたの?」 戸惑う藤沢を置いて先に歩き出す。 「言葉のまんま」 捨て台詞のように言ってから、首だけ振り向かせた。 「ほら。さっさと帰んぞ」 「いや、うん、そうだけど……」 どうしてこんないい奴が、淋しい生き方を選ぶような世界なんだ。 俺もひとのことは言えない、けど……。 せめて。 どんな形であれ藤沢の結婚する人が、世界で一番、藤沢のことを好きな奴であることを願う。