ダイキくんは頑張り屋の男の子だ。のんびりしているところがあって、ちょっと泣き虫だけど、ほんとは根性がある。四月には目も当てられなかった算数の成績が、六月ごろから、ぐんと伸びた。

 昼休みと放課後に、ダイキくんは必ず百マスかけ算をしてる。みんなと遊びに行く前に、たった一人で。最初はあたしが課題を与えたわけだけど、それを毎日続けるって決めたのは、ダイキくん。

 頑張ってるね、って誉めたら、満面の笑みで言ってくれた。

「ぼくが頑張ったらタカハシ先生が喜ぶけん、ぼく頑張る!」

 むちゃくちゃかわいいのよね、ダイキくん。あたしの誕生日がいつなのか、最初に気にしてくれたのもダイキくんだった。まあ、その日は、あたしの誕生日の二週間後だったんだけど。

 でも、次の日、ダイキくんはあたしへの誕生日プレゼントを持ってきてくれた。花束だった。庭や裏山に咲いてる花だって。新聞紙に包まれた素朴な花束だった。ウルッと来るくらい、ステキにかわいい花束だった。

 教室には、からっぽの花瓶が置かれていた。ダイキくんの花束を、初めて生けた。といっても、あたしはそういうのをやったことなくて、ダイキくんが全部やってくれた。

 それ以来、うちの教室にはいつも花がある。ダイキくんがお花係。水替えも、お手入れも、新しい花を持ってくるのも、花の名前を調べるのも。

 古い花を捨てるとき、ダイキくんは悲しそうな顔をする。

「お墓、作らんばいけんかな?」

 たまたまそこに居合わせたマツモト先生が、ダイキくんの頭をなでた。

「ダイキの気持ちは花にも伝わっとるよ。教室で咲いてくれてありがとうって言えば、花も満足たい」

 ……マツモト先生って、そんな柔らかい顔で笑うんですか。てか、ダイキくん効果なのかな。マツモト先生にまで、優しい顔をさせるなんて。

 “ダイキくんは、優しくて頑張り屋さんです。お花のお世話をしてくれることに、クラス担任として感謝しています”