愛は惜しみなく与う④

「なーなー、泉?」

「ん?どうした?」

「朔にあたしの声は届く?」


その言葉を聞いて助手席に座る杏を見た
なんだかとても、悲しい気持ちになる

どういうことなのか
はっきりとは分からなかったけど


「いつもの朔に、戻ってくれるやんな…」


遠くの方をみて、話しているような、そんな感じがした

大丈夫

それしか言えない


杏には


俺の声は届くんだろうか


杏がもし、今の朔みたいな状態になった時



杏は俺の声を聞いてくれるんだろうか


それから一言も話さずに数分間車を走らせた。朔の実家は街の方からは離れている


倉庫に行ったのが全員ではないとするなら、朔の実家か、大和の周りには絶対何人かいると思って間違いない


こっちは杏と俺だけ


まぁ、戦力的にはいけるか



そして朔の実家の、すぐそこまできている。この大きな公園の角を左に曲がれば、朔の家!

そう思ってアクセルを踏むと

ハンドルを握る手を杏に掴まれた



「公園!!入口戻って!朔おった!」


なんちゅー目してるんだよ…