愛は惜しみなく与う④

「んーちょっと頑張り過ぎたみたい。志木さんは、知恵熱だって」

『知恵熱か。なんか、そんな気がするな』


親父は電話越しに笑った
もう、杏にメロメロじゃね?
よくわかんねーけどさ

杏のこと気に入ってるのは分かる


『とりあえず、守れよ』


「わかってる」


親父のおかげで助かった。
あの時の杏は確かにおかしかった。
今は問題が山ほどある。杏が死んだとかいう、訳の分からない話もそうだけど

先にあの時の話を…
遅くなったけど聞いてあげなきゃ


「俺なにしてんだよ」


自分の不甲斐なさに嫌気が差す

杏が目が覚めるのはいつだろうか

きっと皆んな、杏を待ってる。
朔なんて、べったり病院にはりついて、志木さんにすごく嫌がられていた。

慧は毎日花を変えていた。

響は杏が帰ってきたときに、退院祝いのケーキの練習をしていた。

新は杏に負担かけないようにと、朔と響の宿題を1人で見てくれた


皆んな杏が大好きだから


俺は、俺にしかできないことをする。
杏が目を覚ましたとき、いつもと変わらない生活を送れるように。


もう少し、時間が欲しい


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