愛は惜しみなく与う④

……?はい?
今なんて言った?俺らの家?


『荷物まとめてると思ってたのに』


泉は溜息混じりに、やれやれと呟き、動けずに固まる俺の横を通り過ぎて

家の玄関に立つ


何するんだ?

それさえ聞けなかった

この時俺は本当に、思考回路がストップしていた。



泉がインターホンを鳴らす
おい!やっとそこで、やめろよと声をかけたけど、もう遅い


中から女が出てきた
他所行きの顔をして


『あら、どなたかしら?』

『……朔の荷物ある?』


そうストレートに尋ねる泉は、俺の名前を呼んだ。なんだよ。覚えてんじゃん

女の視線は俺に注がれる


『朔くんの荷物?お泊りでもするの?』

『いや?もう帰らないから、必要なものだけ持っていく』


『……!?はぁ?何お前!!!っ!!』


何言ってんだよと掴みかかろうとするが、思いっきり口を大きな手で塞がれて、死にそうになる

ふがふが言う俺をチラリと見て、女に視線を戻す泉は


言った


『お前も…こいつに手を出してるな。見ればわかる』