愛は惜しみなく与う④


『おいおい、邪魔だよ、どっかいけ』

チンピラに肩をドンと押されたのに
泉はぴくりとも動かない

そんな泉の顔をまじまじと見ると、目の下と口の端が切れている。
喧嘩してきたのか?

整った顔に傷がついていてとても目立つ


『お、お前はあの時の』


加藤さんは泉を見て少し震えたが、何せ周りにはチンピラが4人もいる

しかしその中でも泉は顔色を変えない



『探した。家にいないから』


…?
1日待てるか?ってそう言えば聞いてきたっけ。
いや、よく分からないけどさ
さすがに外にずっと居ねーだろ


声を出したいけど気持ち悪くて声も出ない


『…??話せねぇの?お前らなんかしたろ』


いや、どう考えても何かされてるシチュエーションだろ?

頑張って体を起こそうとするが、どうにもこうにも力が入らない


そして1人の男が泉を指差して言った



『や、やっぱり!お前…あ、あの…蕪木泉??やべぇよ!』


1人が騒ぎ出したことによって、周りもざわつく

蕪木泉?こいつのフルネームか?



『……高校生相手に喧嘩してるって噂の…小学生?』