愛は惜しみなく与う④


『まだ母親のこと忘れてないんだね。愚かな子供だね。お母さんって一言、あたしのこと呼べば…父さんにもあんたに手を出すなって言ってあげるのに』

お前は絶対あたしを、お母さんとは呼ばなかったね

そう言いながら笑った


もう全部なくなった


最後の望みもなくなった


俺ってどこからおかしくなったんだろう


いつからこんなに


見える景色が全て汚く見えたんだろう



どうして俺は逃げてるんだろう
居た堪れなくなって
俺は、夢中で走った

昨日痛めた腕は振れないけど、ひたすら走った


もう誰も知らないところへ行きたい
もう誰の目にも入りたくない
もう……誰も構わないでくれ



がむしゃらに走ってふと立ち止まると
大通りに出ていた

ボロボロの俺をみて、眉を潜めて見て見ぬふりをする大人

見てはいけないものかのように、目を逸らす大人

そして


見覚えのある顔を見つけた



加藤…さん


あの日以来…あの泉とか言う奴が、加藤さんを殴り飛ばしてから、加藤さんに会うのは初めてだった