『まだ母親のこと忘れてないんだね。愚かな子供だね。お母さんって一言、あたしのこと呼べば…父さんにもあんたに手を出すなって言ってあげるのに』
お前は絶対あたしを、お母さんとは呼ばなかったね
そう言いながら笑った
もう全部なくなった
最後の望みもなくなった
俺ってどこからおかしくなったんだろう
いつからこんなに
見える景色が全て汚く見えたんだろう
どうして俺は逃げてるんだろう
居た堪れなくなって
俺は、夢中で走った
昨日痛めた腕は振れないけど、ひたすら走った
もう誰も知らないところへ行きたい
もう誰の目にも入りたくない
もう……誰も構わないでくれ
がむしゃらに走ってふと立ち止まると
大通りに出ていた
ボロボロの俺をみて、眉を潜めて見て見ぬふりをする大人
見てはいけないものかのように、目を逸らす大人
そして
見覚えのある顔を見つけた
加藤…さん
あの日以来…あの泉とか言う奴が、加藤さんを殴り飛ばしてから、加藤さんに会うのは初めてだった



