愛は惜しみなく与う④

黙ってじっとしていた男は
俺の背中に腕を回し、近くの壁にもたれかからせる様に座らせた


『名前は?』

『……』

俺の名前か
お母さんが呼んでくれるこの名前が好きだったけど。
最近は殴られるときに、呼ばれるから、嫌いになってきていた


『俺は泉。お前は?』

『…朔』


そう答えた瞬間、俺の目の前にドカンと座り視線を合わせてくる


『……あのさ、どっかいけよ。1人になりたい』

『お前、本当は甘えんぼだろ』


……はぁ????
名前を聞いといて、お前と言われ
さらに甘えんぼと言われる

意味がわからない

本当にどっか行ってくれよ!そう思って言い返そうとしたとき


男は俺のガチガチにかたまる手をとって、そこから小指を無理矢理絡めてきた

なんだよこいつ

振り解こうとしたら男は笑った



『後1日待てないか?』

何を待つのか
何かを期待して待つのも、我慢するのも、もうしんどいんだよ。
そんな俺の考えなんてお見通しだったのか



『もう、頑張らなくていいからさ』




後1日生きろ




そう言われた