愛は惜しみなく与う④

かろうじて開く目を開けてみると

驚いた

見たことあるその男は、あの日助けてくれた奴だ。
なんでここに?いや、そんな事はもうどうでもいい。あっちいけよ

そう言いたかったけど思うように口が動かなかった


『……お前あの時の』


男はびっくりして俺のそばにしゃがむ
傘を放り投げたのか、また雪が落ちてくる

着ていたあったかそうな服を俺に被せて、周りに少し積もった雪をどける

こいつほんと

お節介なのかな


『もういいよ。ほっといて』


ようやく話せた
でも男は無言で俺の腕に服を通そうと体を動かすが

どうも腕がおかしな事になってるのか
曲がらなかった

あまりの痛さに声を漏らすと、男はハッとして『折れてるのか』そう呟く

そうか
だからこんな痛いのか
初めてそこで自分の腕が折れている事に気付いた。

このおかしな状況に少し笑えてきた


『あんたのおかげで…少しだけど俺…まともになれた気がする』


男は悲しそうな顔をしてただ見つめてきた。
その目は

同情なんかじゃなかった


本当に
悲しそうな目をした