愛は惜しみなく与う④

「俺、最低だったんだ。暴力がしんどいって、辛いことって。痛いって分かってんのに。当時1番弱かった、大和を殴った。それに…小学校で嫌なことがあれば、すぐ手を上げた」


どうすれば気持ちが伝わるかなんて知らなかったから。
初めて親父に反抗したとき

スッキリしてしまったから


「今も…鬱憤晴らすために殴るん?」

「いや。今はもうそんなこと思わない。泉に出会ってから…たまに暴走したけど…仲間を守る時にしか、人を殴ることはしない」


喧嘩は世間一般からすれば、同じ暴力だ。だけど俺は泉に、誰かのために力を使うことを教わった

受けていた虐待の跡はもうない
消えてしまった

でも記憶は消えてくれない


「誰かを守れるように、なりたい」


本当は今…

お母さんに会いたい

あの時守れなくてごめんって伝えたい。
あの時もっと強ければ、俺がもっと大人なら

守れたんだ


杏はなにも言わずに抱きしめてくれた

その温もりは


昔大好きだった、お母さんの温もりに似ている、とても温かいかものだった