愛は惜しみなく与う④

『お母さん!!!』

そう言いながらお母さんの腕の中に飛び込んだ。
温かいぬくもり
もう二度と抱きしめてもらえないと思った

だから嬉しかった


俺はこの幸せな思い出さえも
この温もりさえも
忌々しい記憶で忘れてしまっていた



『ごめん、朔、ごめんね』


涙を流しながら俺に謝るお母さん。どこか痛いの?そう聞いても返事はない

ただ、謝られた

俺がもう少し大人なら
中学生とかなら
お母さんを守ってあげれたのかな



お母さんは俺の頭をよしよしと撫でて、そして手に持っていた梨沙のハイヒールを玄関に置いた

そしてそのハイヒールを、とても冷たい目で睨んだ


『ねぇ朔?』

『どうしたの?お母さん』

『今誰かおうちに遊びにきてるの?』

『うん!梨沙が来てるよ!』

そう答えると、階段の方を見て、ただ「そう、梨沙…」と呟いた

なんだか怖くなりお母さんの腕にしがみつくと、再び優しい笑顔で抱きしめてくれた


あぁ

やっぱり俺のお母さんは、この人だ
この温かさは、お母さんじゃないと感じられ無い