お母さんがいないときに

梨沙と名乗った女は

毎日のように家に来た


『お母さんには言うなよ?男の約束だ』


父親にそう言われて、その時は嬉しかったのを覚えている。
だから俺にはこの時、父親が悪いことをしているなんて思ってもみなかった。
知らなかった


お母さんは俺を相変わらず見なかった


けど、家から喧嘩がなくなったことは、良いことだった。
梨沙が家に来るようになって、父親はとても機嫌が良く、俺にも優しかった。

ゲームを買って貰えた

外に出る機会も増えた


これが幸せなのかな

そんな風に錯覚していた


そして今日も、夜に梨沙が家に来て、いつもと同じことを言った


『今からパパと仲良しするから、朔はリビングに居な?あたし達が二階から降りてきたら、アイス食べようね』


お母さんとは違い、独特の匂いを放つ梨沙は、笑顔でそう言っていた父親と二階へ行く


アイスか

嬉しい

梨沙がきてから良いことばっかだ

お母さんと話せなくて寂しかった。でもこの不可解な日常に慣れてきていた