愛は惜しみなく与う④

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朔は弱い

過去と向き合えてない


そらそうよな。
あたしだって向き合えへん

自分が傷つくことを、ふたたび思い出そうなんて、そんな強くない


でも

少しでも支えになれるなら、なりたいと思った。ちょっとでも向き合えるなら…

なんでも受け止めようって



「聞いてほしいことがある」


そうあたしを引き止めた朔は、震える手であたしの腕を掴んだ


あたしは朔の過去を知らない
ぼんやりとしか聞いてないから


それでもきっと、このまま離れてしまうのは後悔するだろうと思ったから

家族に会ってほしかった。


きっと朔は、あたしと同じで
家族に別れを告げていないんやと思う。

あたしも母上に、杏の姿で…堂々と別れを告げることができたら…それをあの人がしっかり見てくれれば

きっとあたしは

東堂からも、母上からも、本当の意味で解放されると思う



ま、叶わへんことやけどさ

朔にはそうなって欲しくない。



「俺、思い出すのが嫌だった。今すげぇ幸せだから。みんなと一緒にいれて、杏も仲間になって…すげぇ楽しいんだ」