愛は惜しみなく与う④

「明日から居なくなるって、二度と会えへんって言われたら、後悔する」


…杏
俺はお前ほど強くはなれなかったんだよ
会わないで済むなら、二度とあんな思いしなくて済むなら…

もうこのままでいい

逃げようとしたのが伝わったのか、杏は少し声を大きくして言った



「直接文句を言うてやることもできひんねん!!!嫌やったこと、苦しかったこと、ぶつけることもできひんねん!!」


そう言われてハッとした
俺はずっと、会ったらまた、あんな思いをしてしまうんじゃないかって考えていた。

でももう俺は

前を向いてるから


一緒に戦ってくれる仲間がいるから



あの頃できなかった
あいつらに文句を言って、自分の気持ちをぶつけることだって出来るんだ


何かを感じたのか、杏は、ふっと笑って、俺の手を引いた



「家に父親おるんやろ?一緒に行ってあげるから。行くで」


車から降りようとする杏を、引き止めた

行きたい訳ではないけど、行かなきゃいけない気がした。この機会を逃せば俺は、一生後悔する


だからその前に…


「杏、聞いて欲しいことがある」



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