愛は惜しみなく与う④


「あたしは、あんたがボコボコにされてるの、助けに来たんちゃう」


グッと唇を噛みしめ杏は俺に視線を合わせた



「一緒に戦ってあげる。一緒にあんたの嫌な記憶に向き合ってあげる。」



そのために、あたしは来たんやで?


力なく笑った杏をみて、目頭が熱くなる


やめてくれよ


「もういいって。大丈夫だって言ってんだろ?」


今更どう足掻いたって、何も変わらない
俺が受けた傷、俺の記憶は、変わらない


だからもういい



「怖いんだよ…」


お前の優しさを感じることが
昔を思い出すことが

とても怖い


杏は俺に、失望するだろうか


いつまでも昔の過去に囚われてる俺に、逃げ続ける俺に……



あの日、家族にしたことを話すと



杏は俺のこと嫌いなるだろうか




「朔が、あたしを受け入れてくれたのと同じで、あたしも朔を受け入れるよ」


ふわりと杏の優しい香りが鼻をかすめた



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