「あたしは、あんたがボコボコにされてるの、助けに来たんちゃう」
グッと唇を噛みしめ杏は俺に視線を合わせた
「一緒に戦ってあげる。一緒にあんたの嫌な記憶に向き合ってあげる。」
そのために、あたしは来たんやで?
力なく笑った杏をみて、目頭が熱くなる
やめてくれよ
「もういいって。大丈夫だって言ってんだろ?」
今更どう足掻いたって、何も変わらない
俺が受けた傷、俺の記憶は、変わらない
だからもういい
「怖いんだよ…」
お前の優しさを感じることが
昔を思い出すことが
とても怖い
杏は俺に、失望するだろうか
いつまでも昔の過去に囚われてる俺に、逃げ続ける俺に……
あの日、家族にしたことを話すと
杏は俺のこと嫌いなるだろうか
「朔が、あたしを受け入れてくれたのと同じで、あたしも朔を受け入れるよ」
ふわりと杏の優しい香りが鼻をかすめた
---------



