「お前の、能力か?」



あまりに綺麗すぎて声が出ない。


自分とは違う世界。


それはこんなにも綺麗なのか。


思わず見入ってしまう様な


綺麗な蝶の羽。


でもそれも長く続かないだろう。


綺麗な物は制限があるからこそ綺麗なのかな。



「壬生さん。政府はどこだ。すぐに向かおう。」



額から汗がにじみ出ている。


私が連れて行った方が早そうだ。



「じゃあな、夜雪」



私はそう言い残してその場を去った。























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がんがんがん!!



政府の鉄のドアを素手で殴る。



こうしときゃ誰かしら来んだろ。



「な、何者だ!!」


中から警備員らしき人物が出てくる。



「…此奴、届けに来た。
 政府に通して欲しい」



「できるわけが…!!」



「通せ」



後ろから出てきた男に驚いた。


音もなければ気配もなかった。


…敵に回したくないタイプだな。



「ご、権中納言様!!」



権中納言(ゴンチュウナゴン)?


随分と良くわからない名前だな。


まぁどうでもいい。



「壬生梨菜を届けに来た。アンタはお偉いさん
 かなんかか?」



「おいお前!!失礼だぞ!!」



「何故?私はここの住人じゃない。」



「一つ問うが…おんしがやったんじゃ
 なかろうな?」



「自分でやった奴を
 ここに連れてくると思うか?」


「なら良い。ついてこい」



男に言われるままついて行く。


紺の髪色に所々はねた癖っ毛。


着物の上には政府の羽織。


ていうか何?


政府はみんな癖っ毛な訳?


いやまぁどうでもいいんだけど。



「おんし、名は」



「平 恋風だ。」



「あっしは匡房(マサフサ)権中納言匡房」



「そのさっきから言ってる
 権中納言って何なんだ?」



「…称号の様なもんじゃの」



「…へぇ」



少しの間。


それだけで何かあると思ってしまった。


実際顔が少し歪んだ。


この話題は此奴にとっては嫌なものなのだろう。




しばらくして匡房の部屋らしきところにつく。


私は壬生梨菜を置いて立ち上がった。



「それじゃあ私はこれで」



「待て」



何故引き止める。



「おんしも足を怪我しちょるぞよ」


「は?」



そんなはずは…


そう言いかけて私は黙った。



本当だ。


少し切り傷?らしきものがある。



「これくらい平気だ」



「座れ」



「だから平気だと…」



「座れというちょるじゃろが」



「…わかったよ。」



手慣れた手つきで手当てをしていく。


よくやっているのだろうか。



「アンタ、よく怪我するのか?
 随分手当ての仕方が上手だが」



「まあ、昔はな」