「退職金の話だって」



久しぶりに俺へと話しかける詩織の声。



退職金……もうそこまで話が進んでいるのか。



「いいのかよ、そんな簡単に退職決めて」



「会社が言うんだもの。それに、私は元々無理に入れて貰ったんだし」



顔は向けずに、けれど寂しさを感じる声色でふっと息を吐くと



「それよりも……龍太の方が困るんじゃないの?社長に黙って来てたんでしょ?」



俺?



俺は……



「関係ねぇよ」