「困った事に、君がかなえさんを選ばないのだとしたら、更に不機嫌になる人間を減らす為に私は君を社に戻さなくてはいけない……」



本当に困ったものだよ……と、おそらくどちらを選んでも不満を抱えるだろう社長が大きく溜息をつく。



「じゃあ……戻して頂けるんですか?」



「…………」



一縷の望みをかけて聞いてみるも答えはない。



そりゃあそうか。



社長もそんな簡単には決められないだろう。



俺だって、仮にそんな話になったとして、それでも元に戻っただけじゃ意味がない。



他の女に手を出している俺のままでは、詩織と恋愛する権利すらないんだから。