望んだ相手が嫌うなら、会わなくたって構わない。



触れられなくたって、笑っていてくれればいい。



ただ一目会いたいと思うのに……それすら叶わないまま



「何考えてるんですか?」



「あ、悪い」



デートに誘われたってのに、隣にいるかなえの事すら忘れてしまうなんて、随分心の奥からダメージを受けているらしい。



「何でもないよ」



敬語をかなえに禁じられた俺は、かといって普通に話せる訳も無く、自分から発した坊ちゃんっぽい物言いに背筋を凍りつかせながら、そっとその手を取った。