しかし、それと同時に勇吾は、右手に激痛を覚え、思わずその場にうずくまった。

慌てて、右手を見ると、じわじわと紫色に内出血しており、鈍い痛みがして、歯を食いしばった。

――オオオォォォオオオ。

まるで地を這うような威嚇する声が、トイレの中から聞こえてきて、背筋が冷たくなった。

勇吾は、ひとまずその場から離れた。
夜になっても痛みが引かず、病院へ行くと、右手の骨にひびが入っていた。

勇吾は、あらためて赤ん坊の呪いの強さを思い知った。
それと共に、ひとつわかったことがある。
あいつにとって、あの古ぼけたトイレは大切な場所のようだ。だから、それを破壊しようとした勇吾にケガを負わせた。
これは、勇吾にとって一筋の希望だった。