えっ、と思う暇もなく、あたりが、朝日のような淡い光に包まれる。

トイレの奥の壁に、人影が現れた。シルエットで髪の長い女性だと分かった。

頭の上に輪っかが浮かんでおり、天使の羽が生えている。

環奈は驚きすぎて、息をするのも忘れてしまった。

『ワタクシはマリア……。神の化身です。あなたの願いに呼ばれて来ました……』

森の奥深くにある湖のように透き通った声が、響く。

環奈はなにか言おうとするが、衝撃でなにも口から発することができない。

『あなたは恋人を助けたいのですね……?』

マリア様の問いかけに、環奈は、はっとして、影に向かって、背筋を伸ばし、「はい!」と返事をした。