交通事故で両親を失い、周りに気を遣って今まで生きてきた。

そんな環奈が初めて自分らしさを出せた誰よりも大切な人。その人を失うなんてこの世の終わりだ。

お願いします雅彦を助けてくれるなら何でもします………。

日が差しこまない薄暗いトイレの中は、静まり返っていた。耳が痛いくらいに。

環奈は号泣しながら、何度もマリア様の名前を繰り返し呼んだ。

その時だった。

一瞬音もなく冷たい風が吹いて、環奈の髪の毛が揺れた。