ひとしきり泣いた環奈が、鼻をすすっていると、どこかから話し声が聞こえてきた。

女子二人組のようで、キャッキャっと高いテンションで会話をしている。

「え〜それマジなの?」

「ホントだって!あの体育館裏のトイレには女神様がいるらしいよ。マリア様っていうんだって!」

「マリア様?」

「そう。強い願いを持つ人の前にだけ現れて、願いをなんでも叶えてくれるんだって!」

願いを叶えてくれるーーその言葉に環奈は、はっと顔をあげた。

廊下の向こうから、ふたつの影が伸びており、環奈のところから、床にうつった影だけだ見えた。

環奈は息をひそめて、耳をそばだてる。

「なんでも⁉︎ でも、どうやって呼ぶの?」