「どうも盗撮されてるみたいで。いつ撮られたか、まったく記憶にないし、昨日、サッカー部の奴から言われて初めて気づいたんだ」

ええっ、と環奈は驚いた。
日常を盗撮という鋭く異様な言葉が、一文字に線を入れる。そこから、誰かに見られているような気がして、気持ち悪くなった。

「どうして盗撮なんて……」

「サッカー部の奴から、市川は中学時代ジュニアサッカー界で有名だったから、今も熱狂的なファンがいると思うって。確かに中学のときストーカーまがいのことはされたことはあったけど……」

そんなことまったく知らなかった環奈は驚いて声も出ない。

「ストーカーって言っても、そんなたいしたことはされてないよ。追っかけっていうのかな。
毎日練習終わりによその中学の女子が出待ちしてて、手紙を渡されたりとかだよ。髪の長いちょっと暗そうな感じの女子だったな。