学校に向かいながら、
 桃ちゃんに話した七星くんとの思い出。

 昨日、
 家に七星くんが来たときのことも話した。


 教室に着いて、一番後ろの窓際の席に座り、
 桃ちゃんと話していると、
 急に腕組みをした桃ちゃんが言った。


「六花、私に任せて!」

 
 急に、何?


 任せるって……
 何をですか?


 桃ちゃんが何を企んでいるかわからなくて、
 私は目をパチパチ。


「私に良い考えがあるんだ!
 六花と七星くんが付き合える、
 とっておきの秘策!」


「え? 
 つ……付き合うとか……絶対ムリムリ!!

 あの、七星くんとだよ!!」


「もう、つべこべ言わない。
 六花は私の隣にいるだけでいいから」


 何をする気? 

 しかも、今から実行しようとしてない?


 私の心がゾワゾワしていることも無視して、
 桃ちゃんは極上の笑顔を作った。


 切れ長の鋭い瞳をもつ、桃ちゃん。


 睨まれると背筋が凍るほど、
 怖がる人続出。

 でも、笑いかけられたら
 ハートを持ってかれちゃうくらい、
 実は綺麗な顔をしている。


 私以外に、
 その笑顔を向けたのを初めて見た。


 しかもその相手が、七星くんだった。


 桃ちゃん……
 自分の魅力に気づいてない……


 私と七星くんを
 くっつけるって言っているけど、
 そんな笑顔を向けたら、
 七星くんは、桃ちゃんに恋しちゃうよ……


 でもそんなこと、
 私のために一生懸命な桃ちゃんに、
 言えるわけもなく……


 桃ちゃんは、七星くんに手招きをすると、
 七星くんはとびきりの笑顔で、
 私たちの方に向かってきた。


 七星くん……
 桃ちゃんの笑顔に
 キュンってしちゃったかな……