☆一颯side☆

 新しい高校に転校して、1週間が過ぎた。


 前の高校とは違って、
 オシャレ感ゼロの学ラン。


 十環のように、
 気の合いそうな男友達なんてできそうもない。


 だって、俺に話しかけてくるのは、
 頬を赤らめて、
 声をかわいく作った女の子たちだけ。


 前の高校では、
 あの美魔女学園長との約束のせいで、
 女子を無下にできなかった。


 でも今は違う。


 俺は六花以外の女に興味なんてないし、
 好きになるつもりもない。


 だから俺は休み時間ごとにヘッドホンを付け、
 近寄ってくる女子を無視し続けている。


 は~


 六花が眠るまで頭をなでていたのは、
 一週間前。


 ずっと六花の傍にいられたらなと
 夢みたいなことを思いながら、
 六花の寝顔を見ていたけど、
 現実は心が踏みつぶされるくらいに残酷。


 六花は俺のことを、
 兄としか見られないとはっきり言われた。


 そして、母さんと父さんとの約束もある。


 六花を兄として、守っていくという約束が。


 六花の傍から離れれば、
 六花のことを忘れられると思った。


 時がたてば、
 六花への思いが薄らいでいくと信じていた。


 それなのに


 家を出た俺は
 なんでこんなに苦しいんだろう……


 六花と一緒に暮らしていた時より今の方が、
 『六花が好き』という気持ちが膨れ上がって、
 押しつぶされそうになっているんだろう……


 ひらひらと舞い落ちる雪の結晶のように、
 透き通った瞳。


 白雪のように真っ白な肌。


 恥ずかしがる時には、
 真っ赤なリンゴのように色づく頬


 六花のことを忘れようと思えば思うほど、
 大好きな六花の一つ一つが鮮明に映し出される。


 そして、その幻影に手を伸ばすとすぐに、
 フッと消えてしまうんだ。


 まるで、はらはらと舞い降りた雪の花が、
 俺の手の上に降り立った瞬間に、
 俺の毒で消えてしまうかのように。