放課後。


 みんな、いつものように
 帰りの支度をして教室から出ていく。


 なぜか帰りたくなくて、ふと外を眺めると、
 お兄ちゃんが校門に向かって歩いていた。
 

 隣には、
 お兄ちゃんにぴったりくっつく
 クルミちゃんが。


 また感じたこの違和感。


 お兄ちゃんが誰と仲良くしようと、
 全く関係ないはずなのに、
 心の奥がギシギシと軋んで痛み出す。


「クルミ、一颯先輩のこと大好きだね」


 突然聞こえた、
 そよ風のような優しい声。


 びっくりして振り向くと、
 悲しそうな瞳の七星くんが立っていた。


 そうだよね。


 クルミちゃんが
 ほかの男の人と一緒にいたら、
 悲しいよね。


 辛そうにクルミちゃんとお兄ちゃんを
 見つめている七星くん。


 その辛さを、取りのぞいてあげたい。


 子供のように無邪気に笑うあの笑顔を、
 取り戻してほしい。


 私には、いったい何ができるかな?


 私はカバンを開けると、
 あるものを取り出して
 七星くんに差し出した。