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執務室には全部で10名ほどの重臣が集まり、会議が開かれた。

「陛下何があったのですか?」

重臣の一人が尋ねてくる。

「トロイアの司祭長から書状が届いた。内容はフィルタイトにアイリスがいると災いが降りかか
るだろう、そうなる前に帰国させよと、帰国させない場合は他国と手を組みフィルタイトに攻め
込むと言ってきた」

「他国とはどこの国なのですか?アイリス様を帰国させれば、戦争は回避できるのですか?」

「アイリスは帰国させん!!」

そう言った低いアランの声に、執務室が静まりかえった。

騎士団長であるラルは、アランを落ち着かせるためゆっくりと立ち上がると、コップに水を入れ
アランに渡した。

「トロイアはかなり矛盾したことを言ってきていますね。和平のためアイリス様をこちらへよこ
しておいて、今になって帰せとは……アイリス様がこちらにいると不都合な何かがあるのかもし
れませんね」

アランはラルの話を聞きながら、水を飲むと椅子の背もたれに、どかりと体重をかけ重臣たちを見渡した。

「アイリスが悪魔と言われ育ってきたことは知っているな。災いが起こるとも言っていた。トロイアの言う他国はそのことを知り、アイリスがこちらにいる限りトロイアに勝利があると思ったのだろう」

「陛下……ではどうしますか?」

不安そうに重臣たちが顔を見合わせる。

「そんな顔をするな、こちらから戦争をするつもりもないが、アイリスも帰国させない。トロイ
アへ話し合いの場を設けるように書状を書こう。ラルすぐに紙とペンを用意してくれ」

「はい。かしこまりました」

ラルが用意した紙とペンを使い、和平の話し合いを提案した書状をトロイアへと送った。



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アランが書いた書状がトロイアへ届くと、それを受け取ったのは王妃だった。

「あらあら、悪魔の子は帰してもらえないのね。ふふふ……じゃあ仕方ないわね。ジェロー?話し合い、うまくいっている?」

「大丈夫ですよ。みなさんこの機会にフィルタイト帝国を潰しておきたいのでしょう。とても乗
り気でしたよ。フィルタイトも国が大きくなりすぎて、周りに敵をつくりすぎましたな」

にやりと笑うジェローを見て「あら、楽しそうね。ふふふ」二人の笑い声が城内に響いていた。