シンと静まり返った部屋の中央に、腰まで伸びたブロンドの髪にエメラルドの瞳の少女が、ひざを折り、頭を下げていた。
そこはフィルタイト帝国謁見の間。
目の前には皇帝である、アラン・フィルタイトが冷たい視線を送り続けていた。
アランの瞳はとてつもなく冷ややかで、黒い漆黒の髪に青灰色の瞳が更に冷たさを漂わせ、近くにいる者は陛下の威圧に恐れ、おののいている。
アランは眉間に皺を寄せ目の前にいる少女を睨みつけた。
何だ?この女……。
トロイア王国第一王女アイリス・トロイア……皆の反応からして美しいことは分かる。
しかし、人形の様に表情がない。
人質同然でここへやって来て普通なら絶望や、恐怖の表情を浮かべるはずだが……そんな様子もない。
何を考えているんだ?
アランは更に眉間にしわを寄せ、悪魔の様に冷たい眼差しでアイリスを見つめているが、本来アランは美しく整った顔立ちをしている。
アランが舞踏会に出れば、沢山の令嬢に囲まれ身動きがとれなくなってしまうほどだ。
しかしアランはどんな令嬢にも靡《なび》かない
皆は、アランを氷の皇帝、冷徹皇帝などと影で呼んでいた。