「ありがとう。助かったわ。」

「いえいえ、大丈夫ですよ。…お腹の赤ちゃ

ん、無事生まれますように。」

私は、一言付け足すようにお腹を擦ってあげ

た。

駅に着くと、私は背を向け歩き出そうとした

その瞬間、

『ありがとう、お姉ちゃん。』

私は、その言葉に思わず振り向いてしまっ

た。

妊婦さんは、大事にお腹をさすり、さっきよ

り顔色が良くなっていたので、私はホッと安

心した。

その言葉は、今まで聞いた中でとても優しく

温かい言葉だった。

私は、こぼれる涙をグッとこらえるように歯

を食いしばった。

これから生まれてくる、命の声が聞こえるの

も悪くないと思った瞬間だった。