入学式から1ヶ月が経った。

相変わらず私は奈穂と時雨と仲が良く、いつも一緒にいた。

「じゃあ、私は部活行くねー」

「奈穂、がんばってね。あ、私も日直の仕事あるから時雨先帰ってていいよ」

「わかったわ。2人ともまた明日」

2人と別れ、私は日直の仕事を再開する。

一緒にやる予定だった男子が忘れて先に帰ってしまったからだ。


「ふぅ.....。終わった」

全ての作業が終わり、一息ついたあと私は誰もいない教室を出て、廊下を歩いていた。

そのときだった。

「〜〜♪〜♪」

どこからか聴こえてくる優美な音楽。

その音を“きらきら星変奏曲”という私にとって様々な感情が入り混じる、曲に乗せて。


演奏が聴こえてくるのは音楽科のピアノ室の方。

私は引き寄せられるように近づいていった。


―――まるであのときのように。


もう行かないという選択肢はなかった。

行っちゃだめだと頭の中では思っていても。


だんだんと駆け足になっていく。

早く行きたい.....その一心で。