「今更そんな顔すんなよ。わかってたんだろ?」

「.....わかってる。人殺しでもいい。先生が私をいくら憎んでても約束は約束だから。もう逃げだしはしない」

でも.....覚悟を決めたから。

お兄ちゃんに人生を弄ばれる訳にはいかない。

「ふん。人殺しの分際でまさかそんなこと言うなんてな。性格悪いにも程がある」

「性格悪いなんてお兄ちゃんに言われたくない。あのトラックの運転手はお兄ちゃんだったんでしょ.....?なら人殺しはお兄ちゃんだよ.....っ」

恐怖が去ると、憎しみが湧き上がってくる。

先生を殺したのは.....私だけじゃない.....っ。

それに先生はまだ死んでないのに死んだように言うなんてひどいよ。

「.....いい感じだ」

「は?」

「ファイナル、お前にだけは負けないから」

.....?

いい感じ?負けない?

話しの方向が意味不明だ。

まぁ、いい。

私だって負けないよ。

先生をあんな目に遭わせたお兄ちゃんに負けるもんか。

全部演奏にぶつけてやる。

お兄ちゃんへの憎しみを、ピアノへの憎しみを。

.....自分への憎しみを。