「扉が閉まります。ご注意ください」

電車の車内アナウンスが無機質に流れる。

今日は高校生活1日目、入学式。

慣れない満員電車の中で必死に吊革に捕まりながら、ふと車窓から外を見る。

通勤、通学ラッシュで混み合う道路。

たくさんの車が行き交っている。

そのなかにはもちろん“あれ”も通るわけで.....。

「.....っっ。トラ...ック...」

“あの光景”がフラッシュバックし、思わず膝の力が抜けてしまった。

電車の振動でハッと我に返り、速くなった呼吸を整える。

「大丈夫?顔色悪いわよ?」

隣にいた女の人が私に声をかけてくれた。

「だ、大丈夫です.....」

「私の飲み物、口つけてないから飲んで」

初対面の私にすごく優しくしてくれる親切な人。

でもお願い、優しくしないで.....。

若い女の人は誰もかも“先生”に見えてしまうの.....。