「サユ」

しばらくの沈黙の後、お父さんが私を呼んだ。そして、顔を上げた私に優しく微笑んだ。

「ありがとう」

「…え…?」

お父さんの予想外の発言に私は戸惑いを隠せずにいた。

「な…なんで?私今、お父さんに余計な事喋っちゃったのに…」

すると、お父さんは困惑する私の頭を優しく撫でてくれた。

「余計な事なんかじゃない。サユは今、キョウマの親である父さんが知るべきだったのにずっと知らずにいた重要な事を教えてくれたんだ。サユが教えてくれなかったら父さんは自分の息子の本性も知らない愚かな父親のままだった。話し辛い事を頑張って話してくれてありがとな。」

お父さんの優しい言葉に、私は再び泣き出してしまった。そんな私をお父さんはギュッと抱きしめてくれた。

「それから…今までサユの出生の事を隠していて本当に済まなかった…。言ってしまうとサユを大きく傷つけると分かっていたから本当は一生内緒にしているつもりだったんだ。卑怯な父親でごめんな…。でもなサユ、サユがどういうきっかけで生まれようが誰の血を引いていようが、サユは父さんと母さんの娘だ。誰がなんと言おうとな。これだけはしっかりと覚えていて欲しい。」

お父さんのその言葉に、私は心の底から救われた。

そうだ。誰がなんと言おうと私を13年間育ててくれたのはお父さんとお母さんだ。私を生かしてくれたのは紛れもなくお父さんとお母さんなんだ。

心を支配していた闇に少しずつ光が差すのを感じた私はお父さんにしがみついたまま、今度は声をあげて泣いた。