目を覚ますと真っ先に視界に入ったのはお父さんの顔だった。すると、お父さんは私が目を覚ましたことに気づいたらしく、

「…サユ?大丈夫か?!」

と声を掛けてくれた。

「お父…さん…?あれ…?ここは…」

私はゆっくりと起き上がり辺りを見回した。

「伯父さんの家だよ。サユ、昨日道端で倒れてたらしいな?サユを家に届けてくれたサユの知り合いの女性が言っていたよ。」

「え…?」

私にはお父さんの言っている意味がさっぱり分からなかった。

知り合いの女性?誰のことだろう?
確か私は昨日カラオケボックスに行って…それで…

思い出すと同時に私は強い吐き気を感じた。あそこで私が見たあの男のおぞましいあの顔…耳を塞がずにはいられない悪魔のような笑い声…そして…知りたくなかった受け入れられない私自身の正体…

「お、おいサユ、大丈夫か?!」

背中を丸めて口元を覆う私を気遣ってくれるお父さん…いや、この人は本当は…

「お父さん…じゃない……」

「え……」

思わず声に出してしまった。両目から大量の涙が溢れ出てくる。

「お父さんは……私の本当のお父さんじゃないんだよね?」

涙声で尋ねる私の問いに、お父さんは驚いたような表情をして私を見ていた。

「あのね…実は昨日……」

私は涙を流しながら、拙い言葉でも一生懸命、昨日あったおぞましい出来事を全てお父さんに話した。あの男の本性も。あの男から聞いたお父さんとお母さんのことも。そして、私の出生の真実も…。

私が全て打ち明け終わると、お父さんは「そうか」と一言だけ呟き、しばらく黙り込んでしまった。そんなお父さんの様子を見て、私は酷く後悔した。私はお父さんに全て話して少し楽になったけど、同時にお父さんにとっては知らない方が良かったであろうあの男の正体を教えてしまった。私は今、自分が楽になるためにお父さんを犠牲にしたのだ。