「…施設を出た後俺は家族に隠れて自傷行為をするようになった。別に病んでた訳じゃない。この自傷行為も俺の実験のうちの一つだった。」

そう言って彼は長袖を捲り、私に手首を見せてきた。無数の傷が刻まれた手首…そういえば彼は夏でも『日焼けで赤くなるから』と、長袖を着ていたことを思い出した。

「でもある日この自傷が母さんにバレてさぁ。あの時はマジで焦ったしめんどくさかったなぁ…。ま、『人を殺した罪の意識に苛まれて自傷行為をするようになった』って事にしてなんとか実験の事はバレないように誤魔化したけどな。俺にそんな意識ある訳ねぇのに。」

この男は…どこまでお父さんとお母さんの人生をめちゃくちゃにしたのだろうか?私は吐き気と眩暈を必死に堪えながら、私を見下ろし嗤う男の顔をじっと睨みつけた。

「で、虫殺しが人殺しにエスカレートした俺の自傷行為がリスカやアムカで止まる訳なんてなくて、サユ、お前が幼稚園の時車に轢かれそうになったあの瞬間、俺はチャンスだと思ってお前を庇ったんだよ。普通に道路に飛び出すより妹を助けるっていう理由があった方が後々めんどくさくならないからな。俺はお前を助けるためとかどうでも良くて、車に轢かれた時の痛みをこの身体で体感したかったんだ。実験は大成功だったよ…。」

「……のに…」

「は?」