記事を読み終わった時、スマホに雫が一滴落ちた。私はいつのまにか泣いていた。

お兄ちゃん…
…そうだ。お兄ちゃんはいつだって自分より家族を優先する優しい人だった。自分を犠牲にしてでも他者を守るような強い人…

私が幼稚園の頃、信号無視の車に轢かれそうになった時、お兄ちゃんは体を張って私を守ってくれた。お兄ちゃんは全治1ヶ月の怪我を負って、それに罪悪感を覚えた私は泣きながらお兄ちゃんに謝った。その時お兄ちゃんは確かにこう言ってくれた。『大丈夫だよ。サユに怪我なくて良かった。』

…そうだよ。お兄ちゃん、あの時包帯だらけの手で優しく私の頭撫でてくれた…
お兄ちゃんはいつも弱い者の味方なんだ…
だから事件を起こした時もきっと…
確かにお兄ちゃんのやったことは取り返しのつかない罪だ。でもお兄ちゃんの根本的な目的は弱い者を守ることだったはず。まだ9歳だったお兄ちゃんは方法を間違えたんだね…。

お兄ちゃんに…もう一度会いたい…

私は強く思った。お兄ちゃんに会って、お兄ちゃんの口から事件のことを聞きたい。そして、今度は私がお兄ちゃんを支えるんだ。『大丈夫。世界中の人が後ろ指刺しても私はお兄ちゃんの味方だよ。』って。

『お兄ちゃん、明日…会える?会いたい。』

約1ヶ月ぶりのメッセージ。私は高鳴る鼓動に逆らうように送信ボタンを押した。