「ねえ、黙ってないで謝罪したらどうなの?私は家に余所者がいても我慢してやってんのよ?私は何も悪いことしてないのに…なんで我慢しなきゃいけないのよ!」

ゴツッ

ジュリネに突き飛ばされた私は壁に思いっきり頭をぶつけた。

「痛っ……」

私が言うと、頭を押さえる私の胸倉をジュリネが掴んだ。

「何よ被害者ヅラ?!私が悪いの?!ねえ、違うよね?!全部アンタのせいよね?!」

「……っ〜〜…」

彼女が怖くなり、ついに私は涙を堪えられなかった。しかし、それがますます彼女を怒らせた。

「てめぇ何泣いてんだよ!親帰ってきたらどうすんだよ!殺人鬼の妹のクセにウジウジしやがって…キモいんだよお前ら!死ね!」

蹲る私を殴り蹴るジュリネ。
確かに彼女は悪いことをしていないのに私達家族のとばっちりを食らった。でも、悪いことをしていないのは私も同じなんだ。
悪いのは私じゃない。お父さんでもお母さんでもない。お兄ちゃんだ。
お兄ちゃんはあの日以降、一人別行動をとることになってこの家には来ていない。元少年A本人が来ればジュリネたちが少年Aの親戚だと世間にバレてしまうかもしれないから。

「死ねっ…死ねっ…死ね!このゴミ女!」

容赦なく振るわれる暴力を、私は我慢するしかなかった。

これも全部お兄ちゃんのせい…
お兄ちゃんさえいなければ私はジュリネからこんな仕打ち受けずに済んだのに…
ううん。それだけじゃない。
お兄ちゃんさえいなければ私は今頃普通に学校に通ってた。リサとシュリとカリナに見捨てられることもなかった。
お兄ちゃんさえいなければ家族3人で平穏に暮らせた…
お兄ちゃんのせいだ…
全部…全部全部全部全部全部全部全部全部…
でも…
なんでかな…
私、お兄ちゃんのこと嫌いになれないよ…
私の中に居るお兄ちゃんは少年Aなんかじゃない。私の自慢の大好きな優しいお兄ちゃん、一ノ瀬響眞だ。
そう…私は今でもお兄ちゃんの過去を受け入れられていない。
お兄ちゃん…会いたいよ…
お兄ちゃん…会いたいよ…
お兄ちゃん…


「…たすけて」

ジュリネにボロボロにされながら、心の中で何度も何度もお兄ちゃんに助けを求める私。そんなSOSが届くはずなんて無いのに。