リビングに取り残された私とお兄ちゃん。
私はおもむろに右隣にいるお兄ちゃんを見上げた。しかし、お兄ちゃんの顔を見るとすぐに視線を戻した。

お兄ちゃんはどういうわけか、お父さんとお母さんが入っていった部屋の方を眺めながら笑っていたのだ。

不意に私の頬を、首筋を、背中を、冷汗が伝う。
私はどうしていいかわからず、震える体を必死におさえながらただその場に立ち尽くしていた。


兄、一ノ瀬 響眞は元殺人少年であるという事実を突きつけられたその日、私は一つ、私の知らない私の家族の真実を知った。
しかし、これはまだほんの序章に過ぎなかった。