授業までサボらせてしまったのに、先輩はまとまりもオチも無い話を聞いてくれた。


「後で2人にお礼させてね」

なんて目元を細める一段と女の子らしい笑顔に、さっきまでのモヤモヤした感情が浮き上がることはない。
私の中にあった胸の支えが下りて、不思議と心が軽くなっていった。


「いえ、リキと2人で行って下さい」

「え?」

「私が先輩にピアノを教えた訳じゃないし」

私がそう言ったのは、"リキと先輩の2人きりにさせてあげよう"自然とそう思えたから。


「でも、花本さんが声かけてくれたからだし」

「そうですけど」

「それに、男の子と2人だとちょっと」

「え?」

なのに、先輩からでた返事は──。