何度か来たことのある家は、家具などは変わってはいないが、あちこちに観葉植物や花が飾られこの空間に彼女が存在していることがはっきりと感じられる。

ほんわかとしておっとりした彼女の雰囲気のせいなのか、好きな相手と結婚したせいなのか、久しぶりにあった香田くんも浮かべている笑顔は以前よりも柔らかなものに変わっていた。

目の前の二人が微笑ましくて、一緒にいるこの空間はとても居心地がよくて…。
 
ふと自分たちはどうだったのか考えてしまう。

ただの同居人だったとしても、私たちはお互いにきを使いすぎて踏み込まない境界線がはっきりとそれぞれ見えていた。

でももう柊との関係は終わったことなのだ。

いくら悔やんでも懐かしんでも、彼の手を離したのは私なのだから。