「だいたい片瀬さん、思わせ振りな態度をとりながら香水の臭いプンプンさせて帰ってくるわ、違う女連れて歩いてる噂耳にするわ、フラれて当たり前ですよ!

バイトしてることも話せばいいんですよ。

なんでなにひとつ彼女に話さないんですか?

言葉にしなくちゃ伝わらないしわかりあえないですよ。

俺たちみたいになりたいなら好きだって言えばいいだけですよ。

触れたいなら触れる。

抱きたいなら抱けばいい。

触れあってお互いの体温を感じて…

どれだけお互いが好きなのか大事なのかわかりあえばいい。

ったく!
落とせない女はいないんでしょ?

逃げれないうちに早く落として、ちゃんと彼女の居場所になってあげてください。

それにいつまでもここにいられても迷惑ですから!

俺は毎日明莉と触れあいたいんです」

ニヤリと口角をあげて笑う香田が、隣に座る明莉ちゃんの肩を抱き寄せると明莉ちゃんはとたんに真っ赤になってその腕から逃れようともがいていたが、力の込められた香田の腕に観念したように顔を赤くしたまま
俺と目を合わせて微笑んだ。

「片瀬さん、彼女もきっと待ってますよ。

そんなに長い間大事にしてたんですからちゃんと伝わりますよ、片瀬さんの想い」

「ありがとう、明莉ちゃん」

明莉ちゃんに笑顔をむけてお礼を言うと香田がムッとして

「俺は無視ですか!」

と不機嫌になった。

一見、無愛想で無表情に見えるこいつは、案外喜怒哀楽がはっきりしていてわかりやすい。

可愛くて堪らないいい奴だ。

俺はいつもこいつの存在に救われる。

「香田。
俺、お前のことすっげー好きだから」

「はぁ!?

言う相手間違えてますから!

とっととなつさんに伝えに行ってくたさい」

苦笑いする香田に

「あぁ、今から行ってくるよ。

ありがとう」

立ち上がった俺は、車のキーを掴み玄関へ向かった。

なつに会うために俺たちの家へ。