「柊、別れよう」

夕飯を食べながら日常会話のように私は柊にさらりと別れを告げた。

私の箸は止まらずに、平静を装いそのまま目の前の食事を口に運んでいたが、ちらりと盗み見た柊は驚いたように目を見開きそのまま動きを止めていた。

「私今月中に病院の看護師寮に引っ越すことにしたから。
ここ引き払うから柊も行くところ早めに決めて」

目の前から伸びてきた柊の手が私の右手を掴んだ。

右手を掴まれたはずなのに、ぎゅっと心臓が鷲掴みにされたように胸が痛い。

「どうして?」

怒ったような柊の声に視線を彼に向けると、眉間にしわを寄せて睨むように私をじっと見つめていた。