誰にも見つからないよう、一人屋上への階段を上がっていた。

まだ右京くんはいなくて。

スマホを見ても連絡が入ってなかった。

実を言うと、この間右京くんと連絡先を交換した。

ピコン。

右京くんかな?

画面を見ると本当に右京くんだった。

『ごめん!家の急用で帰らないといけなくなったんだ。本当はお弁当食べたかったけど、こればっかりは許してほしい』

そうなんだ。

さすがに早すぎるって事だよね。

はぁ。

どうしよう。

あたしは二つの弁当箱に視線を落とした。

こんなに作るんじゃなかった。

「その弁当、俺にくれねぇの?」

は?

どこからか、声がした。

周りを見渡すのに誰もいない。

「だから言ったろ?御曹司はやめとけって」

響が給水タンクの上から降りてきた。

「なんでここに……」

「俺はいつもここにいるんだけど」

嘘だ。

響は学食派だから、昼はここにいない。

なのにどうして?

「弁当余ってんだろ?俺にくれよ」

「でも………」

「たまには俺に甘えろ」

そう言って弁当箱を取り上げた。

「これ、和食じゃん」