「今日から藤堂(とうどう)家の住み込みメイドよろしくな」





始まりはテキトーな父の一言だった。



「何、もう一回言って」

「今日から藤堂家の住み込みメイドよろしくな」

聞き間違いだよね。

だって、藤堂家ってあの有名なとこだもん。

あたしが住み込みメイドなんてそんなこと。

「早く荷物をまとめて藤堂家に行きなさい」

んん?

「父さん、本気なの?」

「そうだぞ。ローン返済のためだからな」

「ローン返済ってまたなんか買ったの?」

「藤堂家の別荘を買ったんだよ」

はあ!?

藤堂家の別荘って何億もするあれ?

ただでさえ、父さんのせいで借金まみれなのに何してくれてんの。

「藤堂さんに相談したらメイドを出してくれたらすぐに返済しなくていいって言ってくれたんだ」

ということは………。

「お前がローン返済まで住み込みのメイドになるんだ!」

「待って待って。父さんの私情で可愛い娘を犠牲にするわけ?あたしは嫌だよ」

「そんなお前にいいお知らせだ。お前が仕えるのは藤堂家の御曹司だ!」

御曹司!?

「しかも同級生だとな。藤堂さんも喜んでいたよ」

その男と住まないといけないわけ?

絶対に嫌だよ!!

「というわけだ。早く行ってこい」

父さんはあたしの持ち物をささっとまとめて、あたしを家から追い出した。