真城くんは推しになりたくないらしい。


またまたある日のこと。

スマホの【ハルトくんフォルダ♡】
に大量に保存されているハルトくんの麗しいお写真を、休み時間にニヤニヤと見ていたとき、

注意(よい子のみんなは真似しないようにしようね!)

「…伊住さんって、やっぱりその人の顔がタイプ なの?」

と、画面の中の王子そっくりの隣の席の王子、真城くんに話しかけられました。
あ、ちなみに話しかけられるなんてとってもレアなことです。

私は「んー」と言いつつ、マジマジと画面の中で眩しい笑顔を見せるハルトくんを見ながら、

「いや、別に顔がタイプとかではないよ」と答える。

それにあまり納得がいかなかったらしい真城くんは、

「じゃあ何でその人を推してるの?」

と、ヲタクにとってなんとも難しい質問を投げかけてきた‼︎
頭を抱えて必死に考え、出てきた私の答えは、

「考え方が、好きなんだ。
もちろん、純粋にかっこいいっていうのはある よ。
でも、かっこいい人が見たいなら、芸能人さん にはたくさんいるんだからハルトくんじゃな  くたっていい。」

「ハルトくんの、仕事に向かう姿勢とか、学業も疎かにしてないところとか全部憧れてるの。」


そうやって言って、真城くんの望んでいた答えになったかと少し心配になって彼を見ると、
何やら少し考えているみたいで。

でも次の瞬間には、真剣な眼差しに射抜かれた。

「じゃあ、『現実』だったら、どんな人を好きになるの?」


現実……いわゆる、今いる場所。

正直、今まで本気で好きな人とか出来たことがない私には、本当に本当に未知の世界。

でも、なんとなく思うのは…、

「優しくて、誠実な人…?んー、私、好きになった人がタイプ…なんだと思う。」

私の年齢、17歳=彼氏いない歴だと悟られないように、私なりに受け応えた。


な、の、に!

「……、彼氏いたことある、よね?」


真城くんが小さな声で次に聞いてきたのは、
まさかの歴代彼氏の有無……‼︎
しかも、いる前提で聞いてない…???

え、どうしよう、パニックだ!
ヲタクといえど、私も女子。
彼氏欲しいなぁ、とずっとポヤポヤ考えてきて、いないっていうのはやっぱり辛くて、

チラリ、と真城くんの方を見やると、見たことないくらい超真剣に私の答えを待ってる。


「…ひ、秘密…です。」

そう答えるや否や、
真城くんは天を仰いで、ため息。

「…彼氏いたんだね」

上を向いたまま、横目でそう言う彼に、

何故そうなる⁉︎⁉︎という気持ちでいっぱい。
私みたいな可愛くもないヲタクの彼氏してくれる人なんて、いないに決まってるじゃん‼︎

しかもなんか、真城くんの表情が暗くて、なおも訳がわからない。

「…これまでの彼氏は、優しいヒトでしたか?」

首を傾げて、私のいるはずもない彼氏について詮索してくる彼に、

なんか、だんだんむかついてきた。

秘密って言ってるんだから、
女子にとって彼氏がいないっていうのは、辛いことなんだから。

かっこいいこの人には、そんな苦労、わからないんだ。


「…秘密って言ってるんだから、聞かないでよ」

私に、こんな冷たい声が出るなんて知らなかった。
けれど、気づいたらそうやって、私は真城くんを拒絶していたんだ。


視界の隅に存在する彼は、
やってしまった…というように、目を見開いて一瞬私の方を見たあと、考え込んでいるようだった。

きっと、他の男子になら「彼氏いたことないんだよね」って、軽く言えてただろうけれど、

何故だか、真城くんにはそれを言いたくはなかった。

何故かは…、私にはまだまだ、わからないことだった。